発表論文紹介

外来種アライグマがニホンヒキガエルを捕食 ― 生態系への新たな脅威を確認

論文名:Predation of the Japanese Common Toad Bufo japonicus by Invasive Raccoons

掲載誌:Current Herpetology, 44(2):177-188 (2025).

著者:Hayato Chiba, Yukio Yasui, Mitsuo Osumi, Noriyuki Oshima, Mariko Takahashi, Yukiko Egawa, Tatsunari Yamaguchi, Hiroyuki Fujita, Hiroo Numata, Yuichiro Asazuma, Takeo Kuriyama

DOIhttps://doi.org/10.5358/hsj.44.177

概要

両生類は水辺と陸地の両方で暮らし、生態系において重要な役割を担っています。しかし近年、環境の悪化や病気、気候変動により数が減少しており、さらに外来生物であるアライグマによる捕食も新たな脅威となっています。

当センターの栗山武夫主任研究員(兵庫県立大学准教授)は、千葉駿(兵庫県立大学大学院生)、神戸カワバタモロコの会のメンバーと共同で、日本の在来種であるニホンヒキガエル(Bufo japonicus)がアライグマからどのような影響を受けているのかを明らかにするため、繁殖期を中心に5年間にわたって調査を行いました。赤外線カメラを設置し、アライグマの行動やヒキガエルの出現状況を記録しました。

その結果、繁殖地でアライグマによる捕食の様子が映像で確認され、繁殖期にはアライグマの出現が増えることがわかりました。さらに、観察されたヒキガエルの数は調査期間中に減少し、繁殖地1か所あたり年間10回以上の捕食が発生していました。アライグマは繁殖のために池に集まったヒキガエルを狙って捕食していると考えられます。

日本におけるアライグマの分布は2007年から2017年の10年間で約2.8倍に拡大しており、今後も在来両生類への影響が懸念されます。本研究は、ヒキガエルの保全とアライグマの適切な管理の必要性を示すものです。

カエルの繁殖期を狙う外来アライグマ ― 捕食の季節性を解明

論文名:Prey Phenology of Invasive Raccoon on Three Frogs During Temporal Breeding Period

掲載誌:Current Herpetology, 44(2):109-123 (2025).

著者:千葉 駿、栗山武夫

DOIhttps://doi.org/10.5358/hsj.44.109

概要

日本はカエルをはじめとして多くの両生類が生息する地域ですが、外来生物や環境の変化によって、その数が減少することが懸念されています。特に湿地を好むアライグマは、カエルを捕食することで在来種の存続に影響を与える可能性があります。

当センターの栗山武夫主任研究員(兵庫県立大学准教授)と千葉駿(兵庫県立大学大学院生)は、兵庫県の「あいな里山公園」で、アライグマがカエルの繁殖時期繁殖時期に合わせて湿地に現れるかどうかを調べました。2022年から2024年にかけて、28か所でカメラを設置し、アライグマの行動とカエルの鳴き声や卵の有無を観察しました。

その結果、アライグマの出現は、ニホンアカガエルやシュレーゲルアオガエルの繁殖のタイミングと強く関係していることがわかりました。つまり、アライグマはカエルの鳴き声や繁殖活動を手がかりにして捕食していると考えられます。

この研究は、外来アライグマが日本のカエル類に及ぼす影響を理解し、在来種の保全につなげるための重要な知見を提供するものです。